月次の数字の管理──社長が毎月見る1枚の作り方

この記事の要点

  • 月次の数字の管理は、判断に使う数字を毎月同じ日に同じ形の1枚で出し、次の一手を決める仕組みです
  • 項目は5〜8に絞ります。売上・粗利・固定費・現預金に、業種ごとの数字を2〜4つ足します
  • 大事なのは精度より定時性。締め日・報告日・集計の担当を決め、判断に足りる概算で割り切ります
  • 打ち合わせは「数字→原因→次の一手」の順。記帳・決算・税務の判断は税理士など専門家と連携します

「今月の売上は、通帳を見ればだいたい分かる」。そう話す社長は少なくありません。ただ、粗利がどう動いたか、来月以降の受注は足りているか、人の手は空いているかまで聞くと、答えが「決算が出たら分かる」に変わります。数字はあるのに、判断に使える形で手元に届いていない状態です。

月次の数字の管理とは、経営判断に使う数字を毎月決まった日に、決まった形の1枚にまとめ、「数字 → 原因 → 次の一手」を話して決めるまでの仕組みです。会計の専門知識を社長が身につける話ではありません。

この記事では、1枚に載せる項目の選び方、数字の出どころと集計の担当、締め日と報告日の決め方、月次の打ち合わせの型を順に説明します。記帳・決算・税務は専門家の領域として分けて扱います。

決算書だけでは、経営判断に間に合わない

年に一度の決算書は「結果の確認」には使えても、「途中で手を打つ」には遅すぎます。

中小企業基盤整備機構のJ-Net21 ビジネスQ&A「月次決算の考え方と導入方法」は、法律に基づく決算は年1回で足りるとしたうえで、「決算期が終わってから業績を知っても後の祭り」と書いています。年度の途中で業績をつかむための仕組みとして、毎月の決算を勧めています。

先の見通しを持つことも、財務の状態と関係があります。中小企業庁の2021年版 中小企業白書 第2部第1章第1節では、業績・資金繰りの予測期間が長い企業ほど、財務面の課題を「特にない」と答える割合が高いと分析しています。因果までは言えませんが、先の数字を持つ会社ほど慌てていない傾向は読み取れます。

資料主な目的作る人社長の使い方
決算書・申告書税務申告、金融機関や取引先への報告税理士など専門家と経理年に一度、結果を確かめる
会計ソフトの月次の集計帳簿を月ごとに締めて確かめる経理・税理士事務所科目が多く、そのままでは読みにくい
経営のための1枚今月の判断を決める集計の担当・右腕毎月同じ日に、同じ形で見る

1枚は決算書の代わりではありません。決算書と会計ソフトの数字を土台にしながら、判断に要る数字だけを抜き出したものです。

1枚に載せる項目は5〜8に絞る

項目は、どの会社にも共通する四つを土台にし、業種ごとの数字を2〜4つ足して、合計5〜8にします。

共通の四つは、売上・粗利・固定費・現預金です。J-Net21の同じ回答は、業績を改善するポイントを「売上高を増やす」「限界利益率を上げる」「固定費を減らす」の三つに整理し、この変化を月次で把握して「なぜだろう」と問いかけることを勧めています。1枚では限界利益を身近な粗利で代え、支払いの判断に直結する現預金を加えます。

足す数字は、「来月以降の売上を先に知らせてくれるもの」と「社長が普段、勘で見ているもの」から選びます。

業種の例足す数字の例選ぶ理由
専門サービス・士業・コンサルティング受注見込み(案件の段階別)、人の稼働売上は人の時間で決まり、見込みが先に動く
製造・BtoB受注残、納期の遅れの件数売上になる前の山と、止まりかけの工程が分かる
飲食・小売客数、客単価、人件費売上の増減が「人数」と「単価」のどちらかが分かる
IT・Web、継続課金の事業継続契約の数、解約の件数翌月以降の売上の土台が見える

会社全体の「健康診断」は別の道具に任せます。経済産業省のローカルベンチマークは、企業の経営状態を把握する「企業の健康診断」のツールで、財務面では売上増加率や営業利益率など六つの指標を使います。こうした診断で会社の全体像を確かめる一方、毎月の1枚は目先の動きをつかむためのもの、と役割を分けると、項目が増えすぎません。

1枚の形も決めておきます。項目ごとに「当月」「計画または前年同月」「差」「ひとこと(なぜ動いたか)」の4列にし、順番と定義を毎月変えません。粗利に何を含めるかのような定義は、税理士と相談して最初に言葉にしておきます。

数字の出どころと集計の担当を決める

1枚が続くかどうかは、項目ごとに「どこから取るか」と「誰が取るか」が決まっているかで決まります。社長が自分で集めている限り、忙しい月から止まります。

項目主な出どころ集計の担当の例
売上・粗利・固定費会計ソフト(記帳が月ごとに進んでいることが前提)経理、税理士事務所と確認
現預金ネットバンキングの残高、入出金の予定経理
受注見込み・受注残販売管理、案件一覧のスプレッドシート営業の責任者
客数・客単価・継続契約レジ・予約・契約管理のシステム店長、担当者
人の稼働勤怠、工数のスプレッドシート各部門の責任者

J-Net21の回答は、月次決算を早く出すための仕組みとして、勘定科目ごとに発生額や残高明細の担当者を決めることを挙げています。1枚でも同じで、項目ごとに担当を一人決め、担当は自分の数字の「ひとこと」まで書きます。

会計ソフトの数字は、記帳が月ごとに進んでいないと出ません。記帳の頻度や締めの時期は、税理士事務所と相談して決めます。何を経費とするかなどは専門家の判断です。中小企業庁の中小会計要領のQ&Aは、中小企業向けの会計ルールである中小会計要領を活用すると、自社の財務状況が明らかになり、経営改善などを的確にできるようになると説明しています。1枚はその土台の上に乗ります。

締め日と報告日を固定する

数字は、正確さより「毎月同じ日に出ること」を優先します。J-Net21の回答も、月次決算の確定日を決めて関係者全員で共有すること、会社全体の経営判断に使う数字なら、ある程度の概算で良いと割り切ることを勧めています。

始め方は、次の順番です。

  1. 締め日、各担当の入力の期限、1枚を送る報告日を決める(下の表が例)
  2. 月次の打ち合わせの日時を、1年分まとめて予定に入れる
  3. 間に合わない数字は空欄にせず、概算と書いて出す
時期やること担当
月末締め。請求・入金の確定を急ぐ経理、営業
翌月の第3営業日まで各項目の数字と「ひとこと」を入れる各項目の担当
翌月の第5営業日1枚を社長に送る。概算の箇所を明記集計の担当・右腕
翌月の第2週月次の打ち合わせ。次の一手を決める社長、担当、右腕

日付は会社の事情で決めて構いません。大事なのは、毎月動かさないことです。報告日が月によってずれると、担当者は「今月は遅くてもよい」と受け取ります。

月次の打ち合わせは「数字→原因→次の一手」で話す

打ち合わせは、数字を読み上げる場ではなく、次の一手を決める場です。1枚は事前に配り、読んできた前提で始めます。会議全体の型(議題の集め方、決める議題と報告の分け方、議事録)は「中小企業の会議を減らして回す」で説明しています。

J-Net21のビジネスQ&A「財務諸表の分析結果を経営改善活動に活用するには」は、指標の良し悪しを知るだけでは改善につながらず、指標を悪化させている具体的な原因を探る必要があると書いています。原因まで下りないと、翌月も同じ数字を眺めることになります。

段話すこと出す人
数字計画から外れた項目だけを挙げる。順調な項目は飛ばす集計の担当・右腕
原因なぜ外れたか。担当の「ひとこと」を起点に、事実で確かめる各項目の担当
次の一手何をやる・やめるか。担当と期限をつける社長が決める
持ち越し調べないと分からないことを、次回までの宿題にする右腕が記録

決めた一手を、期限と担当つきで翌月まで追いかける方法は「決めたことが進まない会社に足りない、会議を「回す人」」で詳しく扱っています。この記事は、その会議に持ち込む数字の側の話です。

中小企業庁の2020年版 小規模企業白書 第3部第2章第1節では、自社の現状把握や経営計画の運用を「十分」と評価している事業者ほど、売上高などが増加したと答える割合が高いと分析しています。毎月の1枚と打ち合わせは、この「現状把握」と「運用」を月単位で続ける方法です。1年の計画そのものの作り方は「中小企業の経営計画の作り方」で説明しています。

うまくいかないパターン

  • 項目を増やしすぎる。気になる数字を全部載せ、20行を超える。打ち合わせが読み上げで終わります
  • 社長が自分で集める。忙しい月に止まり、そのまま再開されません
  • 正確さを待って遅れる。月の半ばに出た数字では、その月の手が打てません
  • 毎月、形が変わる。前月と並べて見られず、変化に気づけません
  • 原因を話さずに終わる。「今月は悪かった」で閉じると、次の一手が出ません
  • 1枚の数字で会計の判断をする。経費の扱いや税の話は、税理士など専門家に確認します

1枚が回っているかのチェックリスト

  • 1枚の項目が5〜8に絞られ、順番と定義が毎月同じ
  • 項目ごとに出どころと担当が決まっている
  • 締め日・入力の期限・報告日が決まり、関係者が知っている
  • 報告日に1枚が届き、概算の箇所が明記されている
  • 各項目に、担当が書いた「ひとこと」がついている
  • 打ち合わせが1年分、先に予定に入っている
  • 打ち合わせで決めた一手に、担当と期限がついている
  • 記帳・決算・税務の判断は、税理士など専門家と分担できている

Tech Bloom の現場では

Tech Bloom は、外部COO(COO代行・社外COOとも呼ばれます)として、社長の右腕の立場で月次の数字の管理を引き受けています。進め方は「聞く → 整理する → 動かす → 仕組みにする」です。

最初に、社長がいま何を見て判断しているかを聞きます。次に、1枚の試作を作り、項目・出どころ・担当・報告日を整理します。そのうえで数か月、集計と1枚づくり、打ち合わせの運営と議事録を右腕が受け持ちながら動かし、形が固まったら担当と手順を社内に残して仕組みにします。

「社長業務の棚卸し」で、判断が要らないため最初に渡す仕事として挙げた「月次の集計」は、具体的にはこの流れです。数字が社長の頭の中にしかない状態をほどく考え方は「属人化をほどく」にまとめています。集計や突き合わせの確認には裏側で AI を使うことがありますが、数字の読み方と最終確認は人が行います(「AI を裏側で使う右腕」)。

どの数字でどう決めるかは社長が決めます。記帳・決算・税務は、顧問の税理士など各専門家と連携し、Tech Bloom は判断そのものや会計・税務の最終判断は引き受けません。経営会議の運営と月次の数字の管理は、プランでは「右腕エグゼクティブ」に含まれます。範囲と料金は料金ページ、サービスの全体はサービスページをご覧ください。

まとめ

  • 決算書は年に一度の結果確認。途中で手を打つには、毎月の1枚が要る
  • 項目は売上・粗利・固定費・現預金に、業種の数字を2〜4つ足して5〜8
  • 項目ごとに出どころと担当を決め、社長は集めない
  • 締め日と報告日を固定し、間に合わない数字は概算と明記して出す
  • 打ち合わせは「数字 → 原因 → 次の一手」。決めるのは社長
  • 記帳・決算・税務の判断は、税理士など専門家と連携する

よくある質問

月次の数字の管理は、税理士に任せればよいのではないですか

記帳・決算・税務は税理士など専門家の領域で、そこは任せるのが確実です。一方で、どの数字を見て何を決めるかは経営の側の仕事です。1枚は、専門家が整えた数字を土台に、判断に要る数字を選んで並べたものです。

会計ソフトを入れていなくても始められますか

始められます。現預金は通帳やネットバンキング、受注見込みや客数は手元の一覧から取れます。売上・粗利・固定費を月ごとに正しく出すには記帳の体制が要るため、会計ソフトの導入や記帳の頻度は税理士と相談しながら並行して整えます。

社長が見るべき数字は、業種によって違いますか

売上・粗利・固定費・現預金はどの業種でも共通です。違いが出るのは、来月以降の売上を先に知らせる数字で、専門サービスなら受注見込みや稼働、飲食・小売なら客数と客単価などです。数か月使いながら入れ替えます。

社員が数名の会社でも、月次の打ち合わせは必要ですか

人数が少ないほど、数字が社長の頭の中だけにある状態になりやすく、毎月の1枚は役に立ちます。打ち合わせは社長と経理担当、右腕の少人数で構いません。時間より、毎月同じ日に開くことを優先します。

外部COOに頼むと、どこまでやってもらえますか

Tech Bloom の場合、1枚の設計、数字の集計と取りまとめ、月次の打ち合わせの運営と議事録、決めた一手の進み具合の確認までを受け持ちます。経営判断そのものと、会計・税務の最終判断は引き受けず、顧問の専門家と連携して進めます。

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毎月の数字がまだ形になっていない段階でも構いません。その場で、右腕として引き取れる仕事を整理してお伝えします。お問い合わせからどうぞ。

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