新規事業が社長の片手間で止まる理由──推進役という選択

この記事の要点

  • 新規事業が止まるのは、既存事業の急ぎが毎回勝ち、段取りと調整が社長の手元に溜まるからです
  • 調査・検証の段取り・調整・申請の準備・期限の管理は推進役に渡せます。やる/やめるは社長が決めます
  • 段階ごとに「次へ進む条件」と「やめる基準」を先に決めておくと、判断が遅れません
  • 推進役は採用のほか、外部COOのような業務委託でも置けます

既存事業は回っていて、次の柱を育てたい。アイデアもあり、話を聞いてくれる協力先もいる。それでも半年たって振り返ると、進んだのは最初の打ち合わせだけ。新規事業を社長が自分で進めている会社から、よく聞く話です。

新規事業の推進役とは、社長が決めた方向に沿って、調査・仮説の整理・小さな検証の段取り・関係者との調整・期限の管理を引き受け、社長の判断が必要な場面を材料とそろえて持ってくる役割のことです。Tech Bloom が提供する社長の右腕・外部COO(COO代行・社外COOとも呼ばれます)は、この役割を業務委託で担います。

この記事では、社長の片手間で新規事業が止まる構造、推進役に渡せる実務と社長が持つ判断、段階ごとの進め方、やめる基準の決め方、うまくいかないパターン、チェックリストを整理します。決めたことが進まない一般的な理由は「決めたことが進まない」に、創業期の会社全体の実務は「スタートアップ社長に外部COOが要るとき」に書いています。ここでは、既存事業のある会社が新しい事業を立ち上げる場面に絞ります。

新規事業が社長の片手間で止まる三つの構造

結論から言うと、社長の能力や熱意の問題ではありません。既存事業と新規事業を同じ一人が持つと、構造として新規事業が後回しになります。

中小企業庁の2023年版中小企業白書 第2部第1章第1節は、既存事業拡大と比べて、新規事業創出の取組は不確実性が高く、困難を伴うものであると考えられる、としています。同じ節は、既存事業の業績が好調なうちに新規事業創出に取り組む意義が示唆される、とも述べています。新規事業に向く時期は、既存事業が忙しく回っている時期と重なりやすいということです。

構造起きていること結果
既存事業の急ぎが毎回勝つ顧客対応・トラブル・資金繰りには期限があり、新規事業には期限がない新規事業の作業が夜と週末に押し出される
段取り・調整・資料が溜まる検証の準備、協力先や専門家との日程調整、説明資料づくりが全部社長の手元にある打ち合わせの「次の一手」が誰にも渡らず止まる
やめる基準がないどこまで進んだら次へ、どうなったらやめる、が決まっていない小さく続けたまま判断されず、時間と費用だけが出ていく

三つ目は見落とされがちです。止まる理由が「忙しい」だけなら時間を作れば動きます。判断の基準がないと、時間ができても何を確かめればよいかが分からず、同じ場所にとどまります。

人の手が足りないのは、社長だけの実感ではありません。白書の第1部第4章第3節は、中小企業のイノベーションの課題として、研究開発段階でも、販売開始・事業拡大の段階でも、リソース面では人材不足の課題が最も大きいとしています。

推進役に渡せる実務と、社長が持つ判断

分け方の基準は一つです。お金と方向を決める判断は社長に残し、判断の材料をそろえる仕事と、決めたあとに動かす仕事を推進役に渡します。

実務推進役がやること社長が決めること
調査市場・競合・顧客候補の情報を集め、要点を一枚にまとめる調べる範囲と、狙う市場
仮説の整理「誰の、どんな困りごとを、どう解くか」を言葉にし、確かめる順に並べるどの仮説に賭けるか
小さな検証の段取り聞き取り・試作・試験販売の準備、日程、記録検証にかける費用と期間
関係者・専門家との調整協力先・取引先候補・士業との日程と論点の整理、議事録組む相手と条件
補助金など申請の準備制度の調査、要件の整理、事業計画の整理、提出までの進行管理申請するか、自己負担をどこまで出すか
進捗と期限の管理段階ごとの期限と担当の一覧、定例での報告やる/やめる、方向転換

白書の同じ章の第3節は、「経営者に近い立場にあり、高い専門性や事業推進力を持つ人材」を変革人材と呼び、既存事業拡大と新規事業創出のいずれにおいても、変革人材が「大いに関与した」「ある程度関与した」と回答した企業が約9割だったと紹介しています。社長の近くで事業を前に進める人を置くことは、新規事業では珍しい形ではありません。社長が決めたことを回す役割の全体像は「COOの役割とは」で整理しています。

補助金の申請そのものの分担は「補助金の申請は誰がやる」に詳しく書いています。新規事業の場面では、検証の計画が先で、申請はその手段、という順番を守ります。

段階ごとの進め方

新規事業は段階を区切り、各段階の終わりに社長が「進む・直す・やめる」を決める形にすると止まりにくくなります。

  1. 構想:狙う顧客と困りごと、既存事業から使える資源を書き出す
  2. 調査:市場・競合・制度を調べ、確かめるべき仮説を絞る
  3. 小さな検証:少ない費用で試せる形(聞き取り、試作、試験販売)で仮説を確かめる
  4. 判断:検証の結果を、先に決めた基準と照らして社長が決める
  5. 立ち上げ:投資額を決め、体制・申請・契約・販路の実務を動かす
段階推進役の主な実務次へ進む条件の例社長の判断
構想既存の強みと資源の棚卸し、論点の整理狙う顧客と困りごとを一文で言える調査に進むか
調査情報収集、競合の整理、制度の確認確かめる仮説が絞れている検証の費用と期限
小さな検証段取り、関係者との調整、結果の記録決めた基準を満たす反応がある進む・直す・やめる
立ち上げ体制づくり、申請の準備、進捗と期限の管理計画と担当が決まっている投資額と体制

中小企業基盤整備機構の J-Net21 は、経営ハンドブック「多角化の方法」の留意点に「初めから巨額投資をしない」を挙げ、最初は少額投資にとどめ、自社の能力や市場の状態を見極めてから十分な投資を行えばよい、としています。小さな検証を独立した段階にするのは、この考え方を実務に落とすためです。構想の段階で既存の強みを棚卸しするのは、先の白書第2部第1章第1節が、成長企業は既存事業で培った経営資源を活用しながら新規事業創出に取り組んでいる、と紹介しているからです。

やめる基準を先に決める

やめる基準は、始める前に決めます。始めてから決めようとすると、かけた時間と費用が惜しくなり、判断が遅れるからです。

J-Net21 のビジネスQ&A「新事業に進出する際の留意点を教えてください。」は、新事業への進出がうまくいかずに、既存事業の経営が傾いてしまったというケースもある、と述べています。やめる基準は新規事業のためだけでなく、既存事業を守るための線でもあります。

決めておく項目内容決める人
期限どの段階を、いつまでに終えるか社長(推進役が案を作る)
費用の上限検証の段階で使ってよい総額社長
手応えの基準聞き取りや試験販売で、どんな反応があれば進むか社長と推進役で合意
既存事業への影響既存事業の人手・品質・資金繰りに出たら止める兆候社長
方向転換の条件やめずに対象や売り方を変える場合の条件社長
見直しの場基準と現状を照らす定例の頻度と出席者推進役が運営

基準は、数字にできるものは数字に、できないものは「何が起きたら」という言葉にします。推進役は基準の案を作り、定例のたびに現状を基準と並べて報告します。決めるのは社長ですが、決める場面が定期的に来るようにするのが推進役の仕事です。

うまくいかないパターン

新規事業に推進役を置こうとして止まる型です。

パターン起きること避け方
社長が全部の窓口のまま協力先や専門家からの連絡が社長で止まり、次の打ち合わせが決まらない日程と論点の整理は推進役が持ち、社長は決める場面に出る
検証より先に大きく投資する設備や外注に先にお金を使い、引き返せなくなる小さな検証を独立した段階にする
補助金ありきで事業を決める申請のための計画になり、採択後に動けない検証の計画を先に作り、申請は手段と位置づける
推進役に判断まで渡す方向と投資額が社長の意図とずれるやる/やめる・投資額・方向転換は社長の判断として線を引く
既存事業の社員に兼務させる既存事業の急ぎに引っ張られ、社長と同じ構造で止まる新規事業に使う時間を先に決め、定例で守る
助言だけで実行する人がいない計画はよいが、次の一手を動かす人がいない助言役と推進役を分けて置く

最後のパターンが、Tech Bloom の現場ではよく見る型です。顧問やコンサルタントの計画は手元にあるのに、誰がいつ何をするかに落ちていない。助言と実行の役割の違いは「顧問・コンサル・COO代行の違い」に書いています。助言を受けた計画を、段取りと調整に落として動かすのが推進役です。

推進役を置く前のチェックリスト

当てはまる項目が多いほど、判断と実務を分ける効果は大きくなります。

  • 新規事業の作業が、夜と週末にしか進んでいない
  • 前回の打ち合わせの「次の一手」を誰が持つか、決まっていない
  • 協力先や専門家との日程調整を、社長が自分でしている
  • 検証にかけてよい費用と期限が決まっていない
  • どうなったらやめるかを、誰にも説明できない
  • 補助金の締切から逆算して、事業の計画を決めている
  • 既存事業の社員に兼務させているが、新規事業に使える時間が決まっていない
  • 顧問やコンサルタントの助言を受けているが、実行が進まない

社長の仕事全体を一度書き出したい場合は「社長業務の棚卸し」の手順が使えます。

Tech Bloom の現場では

Tech Bloom は、社長の右腕・外部COOとして、既存事業を持つ会社の新規事業・特命案件を前に進める実務を担っています。進め方は、聞く → 整理する → 動かす → 仕組みにする、の順です。最初の30分の面談では売り込みをせず、新規事業のうち引き取れる実務をその場で整理してお伝えします。1か月のトライアルで業務と課題を棚卸しし、最初の90日の優先順位と本契約の範囲をご提案します。

新規事業の推進は、右腕エグゼクティブのプランに含まれる「新規事業・特命案件の推進」にあたります。調査と仮説の整理、検証の段取り、関係者や専門家との調整、申請の準備、進捗と期限の管理を担い、定例では段階ごとの基準と現状を並べて、社長の判断が要る点をお持ちします。やる/やめる、投資額、方向転換は社長が決めます。契約の締結や支払いの実行、法律・税務・労務の最終判断は引き受けず、各専門家と連携します。プランの詳細は料金、進め方はサービスの案内、契約後の最初の90日は「外部COOの導入の流れ」、業種ごとの例は実例をご覧ください。

まとめ

  • 新規事業が止まるのは、既存事業の急ぎが勝ち、段取りと調整が社長に溜まり、やめる基準がないから
  • 調査・仮説の整理・検証の段取り・調整・申請の準備・期限の管理は推進役に渡せる
  • やる/やめる、投資額、方向転換は社長が持つ
  • 段階を区切り、各段階の終わりに「進む・直す・やめる」を決める。大きな投資は小さな検証のあと
  • やめる基準は始める前に決め、定例で基準と現状を並べる
  • 推進役は採用のほか、外部COOのような業務委託でも置ける

よくある質問

新規事業の担当者を社内に置けば、進みますか

進むこともありますが、既存事業との兼務だと、社長と同じく既存事業の急ぎに押されがちです。兼務にする場合は、新規事業に使う時間と、判断を持ち込む定例を先に決めておくと止まりにくくなります。

外部の推進役に、新規事業の判断まで任せられますか

任せないほうがよいと考えています。推進役は判断の材料をそろえ、選択肢と見通しを示しますが、やる/やめる、投資額、方向転換は社長が決めます。Tech Bloom も経営判断そのものは引き受けていません。

新規事業のやめどきは、どう決めればよいですか

始める前に、期限・費用の上限・手応えの基準・既存事業への影響を決めておく方法があります。定例のたびに現状をその基準と並べれば、なんとなく続ける状態を避けられます。

新規事業に使う補助金の申請も手伝ってもらえますか

制度の調査、要件の整理、事業計画の整理、提出までの進行管理は手伝えます。申請書類の作成は行政書士と連携します。申請するかどうかと自己負担の判断は社長が行い、専門的な確認が要る部分は専門家と連携します。

創業したばかりの会社でも、同じ進め方ですか

考え方は同じですが、創業期は会社全体の実務が同時に立ち上がるため、優先順位が変わります。創業期の実務は冒頭で紹介した記事に、外部COOの役割そのものは「外部COO(COO代行)とは」に書いています。

まずは30分、状況を聞かせてください

新規事業のどこで止まっているか、まだ言葉にできていない段階でも構いません。その場で、推進役として引き取れる実務を整理してお伝えします。お問い合わせからどうぞ。

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