中小企業の経営計画の作り方──社長の頭の中を1年の計画に

この記事の要点

  • 経営計画は、社長の頭の中の方針を「誰が・何を・いつまでに」まで落とし、毎月確かめる仕組みです
  • 1年の計画に入れるのは、方針・重点3つ・担当・期限・月ごとの確認の5点で足ります
  • 年末年始に作り、年明けの定例から月次の数字と並べて進み具合を確かめます
  • 経営力向上計画やローカルベンチマークなど、公的な枠組みも組み合わせて使えます

12月に入ると、「来年はこうしたい」という話が社長の口から増えます。新しい客層を取りにいく、採用を始める、現場から少し離れる。どれも本気ですが、書き出されていないため、年が明けて日々の仕事が戻ると、春には元の動き方に戻っている。Tech Bloom が現場でよく見る流れです。

経営計画とは、社長が考えている方針を、1年の間に「誰が・何を・いつまでに」やるかまで落とし、毎月確かめられる形にしたものです。厚い冊子である必要はありません。数枚の紙でも、確かめる日と担当が決まっていれば回ります。

この記事では、計画に入れる5つの要素、年末年始の作り方、月次の数字と定例へのつなぎ方、公的な計画の枠組みを順に説明します。補助金申請用の事業計画書は扱いません(分担は「補助金の申請は誰がやる」を参照)。

経営計画が「作って終わり」になる理由

計画倒れの原因は、中身の出来よりも「誰が作ったか」と「いつ確かめるか」にあることが多いと考えています。

中小企業基盤整備機構の J-Net21 の経営ハンドブック「経営計画の策定」は、計画倒れに終わる例では「もっともらしい数字やキーワードばかりが並んでいることが多い」と指摘しています。そのうえで、経営計画づくりは人任せにせず、経営者自らが責任を持って策定する必要があり、経営者が進捗の責任者にならなければ実現は難しい、としています。

現場で見る典型は二つです。年始の挨拶で方針を話したが書いたものが残らず、担当も期限もない形。外部に整えてもらった計画書があるのに、社長が中身を説明できず棚に置かれた形。どちらも、月に一度確かめる場がありません。

項目作って終わる計画回る計画
作る人外部や担当者に任せきり社長が書き、周りが整える
中身目標の言葉と数字が並ぶ方針と重点、担当と期限まで書く
重点の数やりたいことを全部載せる3つに絞る
確かめ方年度末にまとめて振り返る毎月、決まった日に確かめる
直し方直さない、または作り直す月ごとの確認で小さく直す

1年の計画に入れるのは5つの要素

来期の計画に入れるのは、方針・重点3つ・担当・期限・月ごとの確認の5つで足ります。

J-Net21 の同じページは、長期のビジョンを描き、3年先の目標を置いた中期経営計画を作り、それを1年単位の行動計画に落とし込むよう勧め、単年度の行動計画書には「基本方針と個別方針」を盛り込むとしています。この記事は、その1年の行動計画を年末年始に作れる大きさに絞ったものです。

要素書くこと書き方の目安
方針来期、会社として何を優先するか1〜2文。社員にそのまま話せる言葉で
重点3つ方針のために今年やり切ること「〜を始める」「〜を仕組みにする」の形で
担当重点ごとに進める人1人の名前。社長が持つなら社長と書く
期限いつまでに、どの状態になるか月で書き、途中の区切りも置く
月ごとの確認どの場で、何を見て確かめるか定例の日と、見る数字や資料

重点を3つに絞るのは、多いほど担当も社長も日々の仕事に負けるからです。外したことは「今年は追わない」と決めたこととして、計画の末尾に書き残します。数字の目標を置く場合は、毎月見る「月次の数字の1枚」と同じ項目で置くと、確かめるときに迷いません。目標の値そのものは、税理士や金融機関とも話しながら社長が決めます。

年末年始に来期の計画を作る手順

12月から年明けにかけて、次の順で進めます。決算期が12月でない会社は、期首の前の月に置き換えてください。

  1. 今年を振り返る。 今年やったこと、止まったこと、社長が抱えている仕事を書き出します。社長の仕事の洗い出しは「社長業務の棚卸し」の手順が使えます
  2. 頭の中を書き出す。 やりたいこと、気になること、やめたいことを全部出します。ひとりで手が止まるなら、話しながら出すほうが早く進みます(「社長の相談相手がいない」も参照)
  3. 方針を1〜2文にする。 書き出したものを眺めて、来期いちばん優先することを言葉にします
  4. 重点を3つに絞る。 方針に効くものから選び、残りは「今年は追わない」の欄へ移します
  5. 重点ごとに担当・期限・最初の一歩を決める。 担当になる人とは事前に話し、現場の意見を反映させます
  6. 月ごとの確認の日を決める。 月次の定例の日を先に1年分押さえ、計画を議題に入れます

手順5では曖昧さを残さないことが大事です。J-Net21 の経営ハンドブック「PDCAサイクルを回すことで生産性を高める」は、「解釈の余地を残さない表現で計画を明文化する必要がある」と書いています。「採用を強化する」ではなく「求人票を何月までに出し、応募の窓口は誰が持つ」まで書きます。

時期やることできあがるもの
12月前半今年の振り返りと、社長の仕事の棚卸し続けること・やめることの一覧
12月後半頭の中の書き出しと、方針の1〜2文方針の下書き
年末年始の休み重点を3つに絞る重点3つと、それぞれの到達点
年明けの最初の週担当・期限・最初の一歩を決め、担当と話す1年の計画(数枚)
年明けの最初の定例社員に共有し、月ごとの確認を始める月ごとの確認表

作って終わりにしない:月次の数字と定例につなぐ

計画は、毎月の定例で月次の数字と並べて確かめて、はじめて回り始めます。

J-Net21 の「経営計画の策定」は、作成した計画書を「毎年、毎月、毎週、毎日という単位で必要に応じてブレークダウンし、経営者と従業員で共有してチェックする」ことで、計画と実績のずれが分かり、問題を早く見つけて対策を打てる、としています。また、1回目から優れた計画書ができるとは考えず、運用しながら必要に応じて目標を修正していくよう勧めています。

確かめる場は新しく作らず、今ある定例の議題に入れます(定例の型は「会議を減らして回す・定例と議事録の型」)。月ごとの確認は次の順です。

順番見るもの決めること
1月次の数字の1枚数字が動いた原因
2重点3つの進み具合(予定どおり・遅れ・止まっている)遅れの理由と次の一手
3止まっている重点担当と期限の引き直し、または今年は追わない判断
4来月やること担当と期限を議事録に残す

進み具合は、まず「やったかどうか」だけを見ます。J-Net21 の「PDCAサイクルを回すことで生産性を高める」も、大事なのは「実行の有無と内容の評価を分離する姿勢だ」としています。やり方の良し悪しを別に話すほうが、担当が報告を避けなくなります。3か月に1回は重点そのものを見直す回を設けると、状況が変わっても計画ごと捨てずに済みます。決めたことが止まる理由は「決めたことが進まない」でも扱っています。

公的な計画の枠組みも使える

自社の1年の計画とは別に、国の制度として計画を作り、認定を受ける枠組みがあります。目的が違うので、流用できる部分と別に作る部分を分けて考えます。

中小企業庁の「経営力向上支援」のページは、経営力向上計画を、人材育成やコスト管理などのマネジメントの向上や設備投資など「自社の経営力を向上するために実施する計画」と説明し、認定された事業者は税制や金融の支援等を受けられるとしています。

中小企業庁の「事業継続力強化計画」は、防災・減災の事前対策の計画を経済産業大臣が認定する制度で、「中小企業のための取り組みやすいBCP」と位置づけられています。認定後も平時からの訓練や見直しが不可欠だとしています。

経済産業省の「ローカルベンチマーク」は「企業の健康診断」のツールで、財務面、商流・業務フロー、非財務面の3枚組のシートです。無料で自社の現状把握ができ、手順1の振り返りに使えます。

枠組み何のためのものか1年の計画との関係
経営力向上計画経営力向上の取り組みを計画し、認定で税制・金融の支援等を受ける重点に設備投資や人材育成が入るときに検討する
事業継続力強化計画防災・減災の事前対策を計画し、認定を受ける災害への備えを重点の一つにするときの型になる
ローカルベンチマーク財務と非財務の両面から自社の現状を把握する振り返りと、金融機関・支援機関との対話の材料

認定の要件や支援を受けられるかどうかは、制度ごとの手引きで確かめ、認定経営革新等支援機関や税理士などの専門家と相談して判断します。

うまくいかないパターン

  • 重点が多すぎる。 絞れず、どれも中途半端に終わります
  • 担当が「全員」や部署名になっている。 名前が書かれていない重点は、誰も自分の仕事だと思いません
  • 期限が「年内」「なるべく早く」。 遅れに気づくのが年末になります
  • 数字の目標だけで、行動が書かれていない。 数字が届かなかった月に、何を変えればよいかが分かりません
  • 発表したあと、次に開くのが年度末。 月ごとの確認の日を先に決めていないと、こうなります
  • 重点の担当がすべて社長。 社長が忙しくなった月に、計画ごと止まります。社長以外に「進める役」を置く考え方は「COOの役割とは」で説明しています

来期の計画が回るかのチェックリスト

年明けの最初の定例の前に、次を確かめます。

  • 方針が1〜2文で書かれ、社員にそのまま話せる言葉になっている
  • 重点は3つまでで、「今年は追わない」ことも書き残している
  • 重点ごとに担当の名前が1人書かれている
  • 重点ごとに期限と、途中の区切りが月で書かれている
  • 担当になる人と、事前に話をしている
  • 月次の定例の日が1年分決まり、計画が議題に入っている
  • 月次の数字の1枚と、計画の項目がつながっている
  • 3か月に1回、重点を見直す回が予定に入っている

Tech Bloom の現場では

Tech Bloom は外部COO(COO代行・社外COOとも呼ばれます)として、聞く、整理する、動かす、仕組みにする、の順で進めます。年末の計画づくりでは、まず社長の話を聞いて頭の中を書き出し、方針と重点の下書きを作ります。何を重点にするかを決めるのは社長です。

年が明けてからは、定例で月ごとの確認を運営し、議事録と期限の管理、担当者への確認を引き受けます。公的な計画の申請を検討する場合は、要件の整理と計画の中身づくりを手伝い、申請書類の作成は行政書士、要件や税務の判断は専門家と連携します。事業承継を視野に入れている会社では、「事業承継の準備」の内容を重点の一つとして計画に入れることもあります。

定例の頻度や引き受ける範囲はプランによって変わります。サービスの内容はサービス、料金は料金プランをご覧ください。

まとめ

  • 経営計画は、社長の方針を「誰が・何を・いつまでに」まで落とし、毎月確かめる仕組み
  • 1年の計画は、方針・重点3つ・担当・期限・月ごとの確認の5点で足りる
  • 年末年始に、振り返り、書き出し、方針、重点、担当と期限、確認の日の順で作る
  • 月次の数字と定例につなぎ、まず「やったかどうか」を確かめる
  • 経営力向上計画・事業継続力強化計画・ローカルベンチマークは、目的に合わせて組み合わせる

よくある質問

経営計画と事業計画の違いは何ですか

使い分けは会社や場面によって異なります。この記事では、会社全体の1年の方針と行動を経営計画と呼んでいます。補助金や融資の申請で求められる事業計画書は提出先の様式に合わせる書類なので、自社の計画を土台に別に整えます。

社員が少ない会社でも経営計画は必要ですか

必要だと考えています。社員が少ない会社ほど、社長が日々の仕事に追われて方針が後回しになりやすいからです。数枚の紙でも、重点と期限と確かめる日があれば役に立ちます。

来期の経営計画はいつ作り始めればよいですか

期首の1か月ほど前から始めると、振り返りと書き出しに時間をかけられます。12月決算でない会社も、期首の前の月に作り、期首の最初の定例で共有する流れがおすすめです。

経営計画の数字の目標はどう決めればよいですか

毎月見る月次の数字と同じ項目で置くと、確かめるときに迷いません。値そのものは、決算の数字や今年の動きを見ながら、税理士や金融機関とも話して社長が決めます。数字だけでなく、その数字のために何をするかを重点として書くことが大事です。

経営計画づくりを外部に頼んでもよいですか

書き出しの手伝いや書類として整える作業は頼めます。ただ J-Net21 の経営ハンドブックが示すように、計画は経営者自らが責任を持って作るものです。重点は社長が決め、外部は聞き役・整える役と、年明けからの確認の運営を担う分け方が回りやすいと考えています。

参考・出典

  1. 経営ハンドブック「経営計画の策定」(中小企業基盤整備機構 J-Net21。確認日 2026-09-26)
  2. 経営ハンドブック「PDCAサイクルを回すことで生産性を高める」(中小企業基盤整備機構 J-Net21。確認日 2026-09-26)
  3. 経営力向上支援(中小企業庁。確認日 2026-09-26)
  4. 事業継続力強化計画(中小企業庁。確認日 2026-09-26)
  5. ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)(経済産業省。確認日 2026-09-26)

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