この記事の要点
- COOの役割は、社長が決めた方針を日々の運営に落とし、終わるまで回すこと。CEOは決める人、COOは回す人です
- COOは会社法上の役職ではなく社内の呼び名。法律上、業務を執行するのは取締役や代表取締役です
- 中小企業では社長がCEOとCOOを兼ね、「回す仕事」が誰の担当にもなっていないことが多くあります
- 担い手の候補は、社内で育てる・採用する・外部COOに任せるの三つ。仕事の中身を書き出してから比べます
「COOを置いたほうがいい」と言われても、社員が数名から数十名の会社では、誰に何を任せる役職なのかが分かりにくいものです。Tech Bloom が中小企業の社長から受ける相談の多くは、COOという肩書きの話ではなく、「決めたあとを回す人がいない」という話です。
COO(Chief Operating Officer、最高執行責任者)とは、社長(CEO)が決めた方針を日々の事業の運営に落とし込み、実行と進み具合に責任を持つ役割です。法律で決まった定義があるわけではないため、ここでは一般的な意味を Tech Bloom の言葉で説明します。
この記事では、COOの役割とCEOとの分担、会社法上の位置づけ、中小企業で「COOの仕事」が空席になる理由、担い手の比べ方と決める手順を整理します。社外の立場でCOOの役割を担う外部COO(COO代行・社外COOとも呼ばれます)の仕事の範囲は「外部COOとは」で扱っています。
COOの役割とは──CEOは「決める人」、COOは「回す人」
結論から言えば、COOの役割は方針を決めることではなく、決まった方針を組織の動きに変え、終わるまで回し続けることです。CEOが「何をやるか、やらないか」を決め、COOが「誰が、いつまでに、どうやって」を組み立てて進めます。
分ける理由は、決めることと回すことで、必要な時間の使い方が違うからです。決めるには社外を見て考えるまとまった時間が、回すには社内の進み具合を毎週追い、止まったところをほどく手間が要ります。一人が両方を持つと、どちらかが後回しになります。
| 観点 | CEO(社長) | COO |
|---|---|---|
| 主な問い | 何をやるか、やらないか | 誰が、いつまでに、どうやるか |
| 見る時間軸 | 数年先の方向と今年の重点 | 今月・今週の進み具合 |
| 主に向き合う相手 | 顧客、金融機関、株主、社外の関係者 | 社員、外注先、社内の会議と数字 |
| 責任を持つもの | 方針と最終判断 | 段取り、期限、仕組み |
Tech Bloom の現場でよく見るのは、社長が新サービスを出すと決めたあと、担当と期限が決まらないまま数か月が過ぎる形です。回す人がいなければ、正しい決定も動きません(関連:「決めたことが進まない」)。
COOは法律上の役職ではない──会社法との関係
COOは、会社法で定められた役職ではなく、会社が社内の役割分担を示すために使う呼び名です。e-Gov 法令検索で会社法の本文を確認すると、「COO」「最高執行責任者」「執行役員」という言葉は出てきません。
会社法が定めているのは、誰が業務を執行するかです。取締役会を置かない会社では、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役が業務を執行します(第348条)。取締役会を置く会社では、取締役会が取締役の中から代表取締役を選定し(第362条)、代表取締役と、取締役会の決議で業務を執行する取締役として選定された取締役が業務を執行します(第363条)。
| 呼び名 | 会社法の条文 | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 代表取締役 | 定めがある(第349条・第362条) | 会社を代表する立場。中小企業では「社長」と呼ばれることが多い |
| 業務を執行する取締役 | 定めがある(第348条・第363条) | 法律上、会社の業務を執行する役員 |
| CEO・COO | 言葉が出てこない | 社内の役割分担を表す呼び名 |
| 執行役員 | 言葉が出てこない | 会社ごとに定める社内の制度 |
つまり、COOという肩書きを付けるだけでは何の権限も生まれません。社内で「何を任せ、どこまで決めてよいか」を決めて、はじめて役割として働きます。
なお、代表取締役以外の取締役に「社長」「副社長」など代表権があると認められる名称を付けた場合の定め(第354条)もあります。肩書きの付け方は専門家と連携して確かめてください。
中小企業では「COOの仕事」が空席になっている
多くの中小企業では、社長がCEOとCOOを兼ねています。役職がないこと自体は問題ではありません。問題は、「回す仕事」が誰の担当にもならず、社長の手元に残り続けることです。
中小企業庁の2023年版中小企業白書 第2部第1章第3節は、「どれだけ優秀な経営者であっても単独で具体的な取組を進めることは難しく」と述べています。2025年版中小企業白書 第2部第1章第1節では、経営計画を策定していない理由として「時間的余裕がないため」が最も多く、経営計画の運用は業務負担が重く、運用の役割を分担できる経営人材の存在が重要だと示唆しています。白書のいう運用(計画の達成に向けた行動、進捗管理、実績の評価と見直し)は、COOの仕事とほぼ重なると Tech Bloom は考えています。
また、2025年版中小企業白書 第2部第2章第2節が、売上高10億円未満の事業者では、重視する組織・人材戦略として「経営者の兼務解消・権限委譲」の割合が最も高く、経営者一人で経営することの限界が「成長の壁」の一つだとまとめています。
空席になっている「COOの仕事」を、Tech Bloom は五つの領域に分けて考えています。
| 領域 | COOの仕事の例 | 社長が兼ねていると起きること |
|---|---|---|
| 進捗の管理 | 決定事項の担当と期限を決め、毎週追う | 決めたことが次の会議まで動かない |
| 会議の運営 | 議題の準備、議事録、宿題の回収 | 会議が報告会になり、決定が残らない |
| 数字の管理 | 月次の数字をまとめ、計画とのずれを確かめる | 数字を見るのが決算のときだけになる |
| 仕組み化 | 手順書、役割分担、引き継ぎの型づくり | 社長しか分からない仕事が増える |
| 社外との調整 | 外注先・専門家との段取りと期限の管理 | 社長の返信が止まると全部が止まる |
会議と数字の型は、「定例と議事録の型」「月次の数字の1枚」で扱っています。社外との調整のうち、外注先の窓口のまとめ方は「外注先が増えすぎた社長へ」に書いています。
COOの仕事を担う三つの候補と比べ方
担い手の候補は、社内の役員・幹部を育てる、COO候補を採用する、外部COOに任せる、の三つです。「誰が優秀か」ではなく、「五つの領域のどれを、いつから担えるか」で比べます。
2023年版中小企業白書(前掲)によると、経営者に続くナンバー2で厚い信頼を寄せられる「右腕人材」の経歴は、内部で育成した人が約7割、外部から確保した人が約3割でした。内部で育成した人は「営業」、外部から確保した人は「経営企画」「経理・財務」「総務」といった管理系の知識・スキルを持つ傾向があり、育成の工夫では「意識的な権限委譲」が最も多く挙がっています。
| 比べる点 | 社内で育てる | 採用する | 外部COOに任せる |
|---|---|---|---|
| 動き出すまで | 育つまでの期間が要る | 採用活動と慣れる期間が要る | 比較的早い。社内の事情を知る期間は要る |
| 社内の事情 | よく知っている | 入社後に覚える | 聞き取りから始める |
| 管理系の仕事 | 本人の経験の幅による | 経験を選んで採れる | 経験のある人に頼める |
| 決裁の持ち方 | 役職に合わせて渡しやすい | 役職に合わせて渡す | 社長の承認のもとで動く |
採用で考えるなら、先に役割を書き出すことが欠かせません。中小企業基盤整備機構のJ-Net21 ビジネスQ&Aは、何年後までに何人の経営幹部が必要で、それぞれどのように役割を果たすべきなのかを思い描き、「忙しいから経営幹部が欲しい」だけでなく具体的な人物像を明確にするよう勧めています。
三つは組み合わせられます。外部COOが仕事を型にしてから社内の担当へ移す形もあります。採用との違いは「右腕を採用せずに持つ」、顧問やコンサルタントとの違いは「顧問・コンサル・COO代行の違い」、右腕がいない会社の選ぶ基準は「右腕がいない会社で起きること」で詳しく比べています。
COOの仕事を誰に任せるか決める手順
肩書きより先に、仕事の中身を決めます。
- 社長の仕事を「決める」と「回す」に分けて書き出す(社長業務の棚卸し)
- 「回す」仕事を上の五つの領域に振り分け、いちばん止まっている領域を選ぶ
- その領域で、任せる範囲と決裁の範囲、報告の型を決める(権限委譲の進め方)
- 社内に任せられる人がいるかを確かめる。いれば育てる計画を立て、いなければ採用と外部COOを比べる
- 期間を区切って試し、進み具合を社長と担い手で振り返る
- 型になった仕事から、社内の担当へ移していく
手順に入る前に、COOの仕事が空席になっていないかを確かめるチェックリストです。
- 決めたことの担当と期限が、会議のその場で決まっている
- 決定事項の進み具合を、社長以外の誰かが毎週追っている
- 月次の数字を、社長以外の人がまとめている
- 会議の議事録と宿題の一覧が残っている
- 社長が1週間いなくても止まらない仕事の一覧がある
- 外注先や専門家との段取りに、社長以外の窓口がある
- 社長が先のことを考える時間を、毎月確保できている
当てはまらない項目が多いほど、COOの仕事が社長の手元に残っています。
よくある失敗
肩書きだけ付けて、決裁を渡さない。 社長がすべてを決め直していては回りません。J-Net21(前掲)も、権限を任せられずにいつまでも社長がすべての意思決定を行っていると、経営幹部として入社した人は疑問を抱くと指摘しています。
役割を決めないまま「忙しいから」で置く。 任せる中身が曖昧だと、COOは社長の雑務の受け皿になります。
営業の責任者を、そのままCOOにする。 白書の結果にあるように、内部で育った人は営業に強く、管理系の経験が手薄なことがあります。数字や仕組み化は別の手当てを考えます。
決めることまでCOOに任せる。 方針まで預けると、社長の考えとずれていきます。決めるのは社長という線は残します。
社長が回す仕事を手放さない。 社長が同じ進捗を追い続けると、報告が二重になり、担い手は指示を待つだけになります。
Tech Bloom の現場では
Tech Bloom は外部COO・社長の右腕として、COOの仕事のうち「回す」側を引き受けています。進め方は、聞く → 整理する → 動かす → 仕組みにする、の順です。
最初の30分の面談では営業をせず、その場で「引き取れる仕事」を整理してお伝えします。1か月のトライアルでは、業務と課題の棚卸しと最初の90日の優先順位づけを行い、本契約の範囲を提案します。流れは「外部COOの導入の流れ・最初の90日」をご覧ください。
引き受けるのは、進捗の管理、会議の運営と議事録、数字の管理、社外との調整、資料やマニュアルづくりなどの実務です。経営判断そのものと、契約の締結や支払いの実行は引き受けず、法律・税務・労務の最終判断は各専門家と連携します。サービスの中身はサービス、料金は料金にまとめています。
まとめ
- COOの役割は、社長が決めた方針を日々の運営に落とし、終わるまで回すことです
- COOは会社法上の役職ではなく、社内の呼び名です。肩書きより、任せる範囲と決裁の範囲が役割を決めます
- 中小企業では社長がCEOとCOOを兼ね、「回す仕事」が空席になりやすい状態です
- 担い手は、社内で育てる・採用する・外部COOに任せるの三つ。五つの領域のどれを担えるかで比べます
よくある質問
COOとCEOの違いは何ですか
CEO(最高経営責任者)は方針を決め、最終判断に責任を持つ人です。COO(最高執行責任者)は、その方針を日々の運営に落とし、実行に責任を持つ人です。中小企業では社長が両方を兼ねていることが多くあります。
COOは法律上の役職ですか
いいえ。会社法の条文に「COO」「最高執行責任者」という言葉は出てきません。法律上、業務を執行するのは取締役や代表取締役で、COOは社内の呼び名です。肩書きの扱いは専門家と連携して確かめてください。
中小企業にもCOOは必要ですか
役職としては必須ではありません。ただ、進捗や会議、数字の管理といった「COOの仕事」は規模にかかわらず発生します。それが社長の手元で止まっているなら、誰かに割り当てる意味があります。
COOと副社長・執行役員は何が違いますか
どれも会社ごとに定める呼び名です。一般に、副社長は社内の序列を、COOは担う機能を表します。執行役員も会社法の条文には出てこない社内の制度です。
COOの役割を外部COOに任せられますか
進捗の管理や会議の運営、社外との調整など、「回す」仕事の多くは任せられます。方針を決めること、契約や支払いの実行は社長に残ります。詳しくは「外部COOとは」をご覧ください。
参考・出典
- 会社法(e-Gov 法令検索。確認日 2026-09-26)
- 2023年版 中小企業白書 第2部第1章第3節 成長に向けた経営者の戦略実行を支える内部資源・体制(中小企業庁。確認日 2026-09-26)
- 2025年版 中小企業白書 第2部第1章第1節 経営戦略(中小企業庁。確認日 2026-09-26)
- 2025年版 中小企業白書 第2部第2章第2節 スケールアップに向けた課題(中小企業庁。確認日 2026-09-26)
- ビジネスQ&A どうすれば会社に必要な経営幹部となる人材を採用できますか?(中小企業基盤整備機構 J-Net21。確認日 2026-09-26)
まずは30分、状況を聞かせてください
COOを置くべきか、誰に任せるべきか、決まっていない段階でも構いません。その場で、右腕として引き取れる仕事を整理してお伝えします。お問い合わせからどうぞ。


